明石市立市民病院の将来を考える
地域医療構想の進捗を見据えた
今後の病院体制のあり方検討部会
「今後の病院体制のあり方に関する報告書」
理事長 藤本 莊太郎
院長 阪倉 長平
当院は、昭和25年に開設されて以来一昨年で創立70周年を迎えました。この間、その時々の医療ニーズに合わせて“市民のための病院”として精一杯の努力をしてまいりました。さらに、平成23年10月からは、国が示す医療制度改革に迅速に対応するために地方独立行政法人となり、診療体制の強化と経営の健全化に多くの改革を行ってまいりましたが、市民の皆様、そして行政、地域医療機関の皆様のご支援により順調に運営させていただき感謝申し上げます。
令和2年初頭からの新型コロナウイルス感染拡大におきましては、当院は明石市唯一の入院診療重点医療機関として令和2年4月1日から診療を開始し、市民の皆様の防波堤となるべく不退転の決意のもとに職員一丸となって取り組んでまいりました。令和4年3月31日までの2年間で重症・中等症を含む計942人の患者さんを診てまいりました。この間、市民の皆様からは多くの激励やご寄付を賜り、また、国や明石市行政からは適切な運営支援を頂き、コロナ診療が原因の離職者はだれ一人出さずに業務に精励できましたことを心より感謝申し上げます。
さて、我が国におきましては、世界に類を見ない少子高齢化の進展が年金制度や国民皆保険を基本とした医療制度を崩壊させるのではないかと危惧され、社会保障費の削減を目的とした病院の再編・統合、病床数の削減や適正配置などを行おうとする“政策=地域医療構想”が提起され議論が継続されています。全国それぞれの地域において千差万別の人口密度や経済格差がある中で一律に議論することには無理があり、難航しているのが現状です。
今回のコロナ診療を進める中で、医療は患者さん一人ひとりに真摯に向き合って成り立つものであり、地域から求められる医療をいかに提供できるのかが病院の生命線であることを改めて学ばせていただきました。当院の建物は築32年目に入り病院の心臓部ともいえる手術室や検査室などの設備の老朽化が顕著となり、近々に再整備事業計画を議論すべき時期になっています。このような時期において、先ずは地域に密着した病院の将来構想を院外の有識者にも参加していただき議論すべきと考えて、「地域医療構想の進捗を見据えた今後の病院体制のあり方検討部会」を立ち上げて計4回議論してまいりました。その結果を、“地方独立行政法人明石市立市民病院 今後の病院体制のあり方に関する報告書”としてまとめました。この報告書は、「こんな病院がいいな」というような夢を語るのではなく、明石市、神戸市西部を含む東播磨医療圏の医療の実態や将来の人口推計、患者さんの受療動態などのデータを客観的に分析して、また、国が示す将来の医療政策も勘案して、20~30年後に私たち明石市立市民病院にどのような医療が求められるのかをまとめたものです。
5月一杯を目途に、当院1階外来ホール(正面玄関入って右手側)に“ご意見箱”を設置しておりますので、皆様のご意見やご要望をお入れください。今後の病院再整備事業計画のスタートにおいて当院の診療機能の向上・改善に役立ててまいります。よろしくお願い申し上げます。